葬儀場と目隠しフェンス
「葬儀場目隠しフェンス訴訟で住民側の逆転敗訴確定 「ストレスは主観的な不快感」」(ヤフーニュースより)
判決文(最高裁のサイトより)
京都府宇治市の住宅街(都市計画法上の第一種住居地域)に建てられた葬儀場について、近隣住民が、葬儀の様子が家の窓から見えるのは人格権侵害であるとして目隠しフェンスのかさ上げなどを求めた訴訟で、最高裁が住民側の請求を一部認容した原審を破棄して、原告の請求を棄却したというニュース。
いわゆるNIMBY施設の問題であり、しかも有害物質の排出とかが問題になっているわけでないのでなかなか難しいところです。
原審[大阪高判2009(H21).06.30]はTKCの判例検索に登載されていないので、原原審の京都地判2008(H20).09.16と対比すると、受忍限度の判断に以下のような違いがあるようです。
原原審の京都地裁は、
○原告が葬儀場の様子を観望することにより受けているストレスは相当程度のものである。
○第一種住居地域内に葬儀場を開設しようとした被告には周辺住民の平穏な生活を侵害しないよう配慮する義務がある。
○被告が目隠しフェンスをかさ上げすることは、技術的にも費用的にもさほど困難ではない。
○原告が最も心の静謐を乱されるのは棺の出入りを観望することである。
・・・・として、少なくとも,棺の出入りが原告居宅2階の各居室等から観望できる限りにおいて、原告が受けている被害は、受忍限度を超えているとしています。
一方最高裁は、
○本件葬儀場と原告建物との間には幅員15.3mの市道がある上、原告建物において本件葬儀場の様子が見える場所は2階東側の各居室等に限られる。
○本件葬儀場において告別式等が執り行われるのは1か月に20回程度で、しかも棺の搬入や出棺は速やかに、ごく短時間のうちに行われている。
○本件葬儀場建物の建築や本件葬儀場の営業自体は行政法規の規制に反するものではない。
○被告は,本件葬儀場建物を建設することについて地元説明会を重ねた上、自治会からの要望事項に配慮して、目隠しのための本件フェンスの設置等の措置を講じている。
・・・・として、原告が、居宅2階から本件葬儀場に棺が出入りする様子が見えることにより強いストレスを感じているとしても、専ら原告の主観的な不快感にとどまるというべきであり、受忍限度は超えていないとしています。
要するに、最高裁は、出棺とかが見えるとしても時間や場所的に限られているでしょ、と言いたいように思えます。しかし、時間的に限られていればいいというのであれば、そもそもフェンスなんかは全く不要ということにもなりえますし、町内会の要望に従ってフェンスを作ったといっても、原告の居宅から観望できるのであれば、目隠しになっていないのでフェンスを作った意味がないことになります。
ちょっと、最高裁の判断には賛成しかねるところです。