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2010年2月 6日

雪だるまが器物損壊罪の客体となるか

冬まつり用に作った雪だるま、50個壊される」(ヤフーニュースより)

さっぽろ雪まつりをはじめとして、道内各地で雪氷系のイベントが行われる時期ですが、旭川の商店街で、冬まつりのために飾っていた雪だるまが50個壊されたというニュース。全く、心ないことをする輩がいるものですね。

ただ、報道中「旭川中央署で器物損壊事件として調べている」という点に「ん?」と引っかかりを覚えました。


刑法261条(器物損壊等)
前三条に規定するもの(注:公用文書等、私用文書等、建造物等)のほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。


雪だるまは、果たして器物損壊罪の客体となるでしょうか。

器物損壊罪は「他人の物」と規定していますが、この「物」とは財物、すなわち何らかの財産的価値を有する物であることを前提としていると思われます。前田雅英・刑法各論講義(第3版)298頁も、「本条の客体は,公用・私用の文書,建造物,艦船以外の他人の財物で,不動産も入る」(傍線引用者)と説明しており、刑法261条にいう「物」は「財物」であるという見解をとっています。

そして、軽微な価値を有するに過ぎない物については財物性を否定するという裁判例が、窃盗についてですがあります。前田雅英・前掲書145頁では、財物性が否定された例として、メモ用紙1枚[大阪高判1968(S43).03.04]、ちり紙13枚[東京高判1970(S45).04.06]などがあげられています。

そうすると、雪だるまが「財物」であるというのは、ちょっと違和感を覚えざるを得ません。

尤も、雪だるまといってもこんなのもありますから、一概に財物性を否定されるとはいえませんがね。


ふるさと小包「早来雪ダルマ」」(北海道雑学百科ぷっちがいどより)


じゃあ雪だるま壊したけしからん輩は何の罪にも問えないのでしょうか。悩ましいところですが、軽犯罪法1条24号あたりで、どうでしょうか?


軽犯罪法
第一条  左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
(中略)
二十四  公私の儀式に対して悪戯などでこれを妨害した者
(以下略)

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コメント

威力業務妨害罪なんていかがでしょ?
捜査するだけなら、この罪名でもいいかなと。

>のぶちゅな氏

ご無沙汰です。そちらはン十年ぶりの大雪だそうで。

なるほど、威力業務妨害ですか。旭川冬まつりが「業務」かという点が問題になりそうですが、冬まつりは商店街のイベントらしいので、「業務」性は肯定してもいいかもしれませんね。

あ、でもそれなら、軽犯罪法1条31号は「他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者」になっていますから実務的にはこれですかね。

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