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2009年3月27日

人工衛星も「弾道ミサイル等」に含まれうる

<北朝鮮ミサイル>破壊措置命令を発令 MD配備で初」(ヤフーニュースより)

朝鮮民主主義人民共和国が来月上旬に人工衛星打ち上げを予告していることに関して、防衛大臣は自衛隊法82条の2第3項に基づく「破壊措置命令」を発令しました。

自衛隊法82条の2
1  防衛大臣は、弾道ミサイル等(弾道ミサイルその他その落下により人命又は財産に対する重大な被害が生じると認められる物体であつて航空機以外のものをいう。以下同じ。)が我が国に飛来するおそれがあり、その落下による我が国領域における人命又は財産に対する被害を防止するため必要があると認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に対し、我が国に向けて現に飛来する弾道ミサイル等を我が国領域又は公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。)の上空において破壊する措置をとるべき旨を命ずることができる。
2  防衛大臣は、前項に規定するおそれがなくなつたと認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、速やかに、同項の命令を解除しなければならない。
3  防衛大臣は、第一項の場合のほか、事態が急変し同項の内閣総理大臣の承認を得るいとまがなく我が国に向けて弾道ミサイル等が飛来する緊急の場合における我が国領域における人命又は財産に対する被害を防止するため、防衛大臣が作成し、内閣総理大臣の承認を受けた緊急対処要領に従い、あらかじめ、自衛隊の部隊に対し、同項の命令をすることができる。この場合において、防衛大臣は、その命令に係る措置をとるべき期間を定めるものとする。
4  前項の緊急対処要領の作成及び内閣総理大臣の承認に関し必要な事項は、政令で定める。
5  内閣総理大臣は、第一項又は第三項の規定による措置がとられたときは、その結果を、速やかに、国会に報告しなければならない。

「弾道ミサイル等の破壊措置」というおどろおどろしい命令が出されたことによって、危機感が煽られているように思いますが、上記に引用した自衛隊法の規定ぶりより、破壊措置命令は飛来する物体がミサイルであるか否かにかかわらず、「その落下により人命又は財産に対する重大な被害が生じると認められる物体であつて航空機以外のもの」という「弾道ミサイル」の定義に当てはまれば発令可能ですから、あたかも東北地方がミサイル攻撃をうけるかのような印象操作はしてほしくないものです。

北の詭弁 どう打ち崩す 「人工衛星」なら安保理決議困難?」(ヤフーニュースより)

特に産経あたりの論調ですと、朝鮮民主主義人民共和国が「人工衛星」だというのが「詭弁」だというのですが、私が思いますに、何でもかんでも「弾道ミサイル」だと言って騒ぐ方がよっぽど詭弁だと思うのですが。宇宙開発はいわゆる宇宙条約で「その経済的又は科学的発展の程度にかかわりなく」「全人類に認められる活動分野」であるとされていますから、この度宇宙条約を批准した朝鮮民主主義人民共和国が宇宙開発を指向すること自体を駄目だとは言えないですし、朝鮮民主主義人民共和国に「いかなる・・・・弾道ミサイルの発射もこれ以上実施しないことを要求」し、「弾道ミサイル計画に関連するすべての活動を停止」することを求める国連安保理決議1695号1718号の射程が人工衛星の打ち上げにまで及ぶかは議論の分かれるところです。仮に、今回の打ち上げで朝鮮民主主義人民共和国が「光明星2号」を軌道に投入することに成功した場合、日本としては振り上げた拳の収めどころに苦慮しそうに思います。

今回の動きは、ミサイル防衛(MD)システムのプレゼンスを誇示して、MDに対する肯定的な世論形成に資するというのが政府の目的なのかな、という感じがします。しかし、MDは集団的自衛権との絡みで憲法適合性に疑問のあるものですから、またどさくさに紛れて、憲法の平和原則の骨抜きを進める動きであるな、と危惧せざるを得ません。

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