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2009年3月14日

海自のソマリア沖派遣

海賊対策 護衛艦、呉基地を出港 4月上旬ソマリア沖到着」(ヤフーニュースより)


ソマリア沖の「海賊」に対処するという名目で、海上自衛隊の艦艇を派遣するという話。

しかし、外国領海の目と鼻の先まで行って武装艦船による船舶護衛を行うというのは、自衛隊の存在自体を憲法9条違反ではないとする立場からしても、正当化は困難と思うのです(なお最初に断っておくと、ワタクシ自身は自衛隊が憲法9条に抵触すると考えております)。


今回のソマリア沖への出動は、自衛隊法82条の「海上警備行動」としてのものです。

自衛隊法82条(海上における警備行動)
防衛大臣は、海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において必要な行動をとることを命ずることができる。

この条文だけ見ると、今回の「海賊対策」はまさに同条の想定している行動だと思われるのですが、自衛隊のそもそもの任務というところから考えると、そうとも言えないと思われます。

自衛隊法3条1項によると、自衛隊の任務は、基本的には我が国の防衛です。

自衛隊法3条(自衛隊の任務)
1項 自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。

この規定は、戦力の保持を禁ずる憲法9条の下で軍事的実力部隊である自衛隊を正当化するには目的を限定するしかないという、憲法との相克によるものなわけですが、そこから考えると、自衛隊の海上警備行動は、日本の領海、あるいはそれに近接する公海上で認められるに過ぎないと考えるのが筋です。よって、海上警備行動でソマリア沖まで行くのは自衛隊の任務を超えていると言わざるを得ません。

自衛隊法3条2項は、自衛隊の任務として、上記に加え、いわゆる周辺事態に対するものと、国際貢献関係の規定をおいていますが、今回のソマリア沖派遣は、海上警備行動を根拠にしているので、とりあえず関係ないです。

自衛隊法3条
2項  自衛隊は、前項に規定するもののほか、同項の主たる任務の遂行に支障を生じない限度において、かつ、武力による威嚇又は武力の行使に当たらない範囲において、次に掲げる活動であつて、別に法律で定めるところにより自衛隊が実施することとされるものを行うことを任務とする。
一  我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して行う我が国の平和及び安全の確保に資する活動
二  国際連合を中心とした国際平和のための取組への寄与その他の国際協力の推進を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の維持に資する活動


政府も今回の海上警備行動による派遣は苦しいということは承知しているはずで、だからこそ、海賊対策の新法を作るという話になってくるわけですが、憲法の枠ということを考えると、憲法の禁止する「武力による威嚇」に当たらないようにするのが大変難しい。そもそも、軍艦が遊弋しているというプレゼンス自体が威嚇効果を有しているわけで、結局、「海賊対策」で自衛隊を出すのは、憲法に適合しないということになりそうです。


そもそも、憲法9条の下では、正当化したとしても「我が国の防衛」という限定した目的で正当化しうるに過ぎない自衛隊が、グローバルな活動をするというのは矛盾していると思うのです。しかし、今回のソマリア行き、あまり批判は出てきませんね。ニュースでどこかの国の海軍が、ソマリア沖で海賊にバンバン撃ちまくって制圧しているのを観ましたが(ひょっとすると訓練の映像かも知れない)、海賊といってもドクロの旗掲げてるような牧歌的な話ではなく、結構えげつないことになるかもしれないのに。

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