嗚呼、市町村合併・・・・
来週の商法の授業で、最判1986.09.11(S61.09.11)を報告しなければなりません。
その関係で事案を調べていたんですが、あれっ、と思うことがありました。
本件紛争は、新潟県三条市にあるX会社が、当時設立準備中であったY会社の発起人Aとの間で、
・新潟県長岡市にあるXの小型ディーゼルエンジン製造工場の営業をAに譲渡する。
・Yが設立されたときは、上記契約に基づくAの権利義務をYが引き継ぐ。
・・・・という契約を結んだ、ということに端を発します。
この契約は、Xからすると営業譲渡(会社法における事業譲渡)であり、Yからすると財産引受ということになると裁判所はいっているんですが、旧商法245条1項1号にいう営業譲渡についての判例の定義、すなわち「営業そのものの全部または重要な一部を譲渡すること・・・・(中略)・・・・譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に同法25条に定める競業避止義務を負う結果を伴うもの」[最判1965.09.22(S40.09.22)参照]に照らしますと、本件ではそもそも営業譲渡にならないのでは、と思ってしまいました。
旧商法25条1項は「営業ヲ譲渡シタル場合ニ於テ当事者ガ別段ノ意思ヲ表示セザリシトキハ譲渡人ハ同市町村及隣接市町村内ニ於テ二十年間同一ノ営業ヲ為スコトヲ得ズ」とありますが、現在三条市と長岡市はばっちり隣り合わせになっています。
判決原文に当たっていただければ社名が出てくるのでわかるのですが、X社はたばこ製造用機械ではトップシェアの会社であり、また、自動車のエンジン部品も一貫して作っています。
とすると、本件でXは競業避止義務負担してへんやないか、ということが言えそうに思ったんですね。
この辺は、新潟出身のクラスの人に聞きましたところ、「昔は隣り合ってなかった」という証言を得ましたので、実際には無問題であるということがわかり、やれやれでございます。
改めて地図を眺めますと、長岡市、いつのまにやら大きくなって、日本海にまで到達しているではないですか(寺泊とか食われたのね・・・・)。三条市も2町村を併呑して大きくなってるし・・・・。
市町村合併は何やらややこしいですな。しかし、こんなところで問題にぶつかるとは予想外でしたよ。
(注)競業避止義務の負担が営業譲渡の要件である、なんて書きましたら、うちの担任のO先生に「そりゃー違うぞ」と怒られそうですが・・・・。