新司法試験の合格率についての簡単な試算
2005年2月28日、司法試験委員会は、2006年度からはじまる新司法試験について、第1回目の試験合格者を900人から1100人、第2回目についてはその倍程度とするという方針を発表した。現行司法試験の合格者は、第1回目の新旧試験併存期間である2006年度が600人程度、翌年度が300人程度と漸減していく、という(詳しくはこちら)。
法科大学院の修了を受験資格とする新司法試験は、法科大学院の修了に多大な費用がかかる上、受験回数が3回に制限されていることから、その合格率は法科大学院の学生にとってはまさに死活問題である。多大な年月と費用を費やした挙げ句、受験資格喪失、では、洒落にならない、というのが法科大学院学生の誰もが思っていることであろう。去年に第一期生として法科大学院に入った方の中には、合格者増の請願署名を集めた方もおられるとのことで、そのような活動には敬意を表するものである。従来、第1回目の試験合格者が800人、とされていた時分と比べると、状況は緩和されたともいえる。しかし、依然法科大学院生にとって厳しい状況が続いていることには変わりがない。
そこで、いくつかの仮定をおいて、2010年までの合格者数の推移について、簡単な試算をおこなった。
(仮定1)2004年度入学の既修コース学生は2300名、法科大学院の総定員は6000人として、この数字は固定する(法科大学院の新設については考慮しない)。
(仮定2)法科大学院を修了した全ての者が、修了後3年連続で司法試験を受験する(受験回避はしない)。
(仮定3)全ての受験生について、合格確率は同一のものとする。
(仮定4)司法研修所の収容人員の問題、ならびに司法修習生の給費制が維持されたという観点から、合格者数3000人という目標については当面実現しないものと考える。そして、報道内容から判断して、合格者数の上限は現行試験・新司法試験を合わせて2100~2500程度であるとする。
(仮定5)現行司法試験の合格者数は、報道されているものを総合して、600→300→200→100→50→0と漸減していく。そして、仮定4で設定した総合格者数を埋めるように新司法試験合格者数が漸増していくものとする。
以上を総合すると、以下のような試算になる。
年度 | 厳しい試算 | 緩やかな試算 | ||||
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
2006 | 2300 | 900 | 39% | 2300 | 1100 | 48% |
2007 | 7400 | 1800 | 24% | 7200 | 2200 | 31% |
2008 | 11600 | 1900 | 16% | 11000 | 2300 | 21% |
2009 | 14814 | 2000 | 14% | 14041 | 2400 | 17% |
2010 | 15530 | 2050 | 13% | 14909 | 2450 | 16% |
このように、第2回目となる2007年度以降、合格率は急落する。私が受験できるのは第3回目の2008年以降になるので、かなり悲惨な状況は変わらない。
また、受験回数が3回に制限されていることから、いわゆる「三振率」について考えると、上記の仮定に従うと、第3回目試験で初受験の者までについては、以下の通りになる。
区分 | 修了者数 | 厳しい試算 | 緩やかな試算 | ||
合格できない人数 | 三振率 | 合格できない人数 | 三振率 | ||
一期既修 | 2300 | 886 | 39% | 659 | 29% |
一期未修・二期既修 | 6000 | 3284 | 55% | 2732 | 46% |
二期未修・三期既修 | 6000 | 3767 | 63% | 3262 | 54% |
なんか、前から分かってはいたし、よく言われていることでもあるけれど、このように試算してみると、改めて、法科大学院というシステムは制度設計に無理がある、と感じられる。えらいところに足を踏み込んでしまったものだ。とりあえず、死ぬ気で勉強しなければならないのは間違いあるまい。